数学研究部 冬休み特別号

クリスマス問題

1

☆☆

$a+b+c=2016$ ($a,b,c>0$) のとき $(a+1)(b+2)(c+3)$ の最大値を求めよ。

2

☆☆☆

$a$, $b$, $c$, $d$, $e$, $f$ が全て非負整数で

  1. $a+b+c+d+e+f=S\ (\Z_+\ni S)$ ($\Z_+$:非負整数)
  2. $\lvert a+b+c-d-e\rvert$, $\lvert a+b+c-f\rvert$, $\lvert d+e-f\rvert$, $\lvert a-b\rvert$, $\lvert b-c\rvert$, $\lvert a-c\rvert$, $\lvert d-e\rvert$ が全て $1$ 以下

をともに満たすような $(a,b,c,d,e,f)$ を良い組とする。

(1)

$S=25$ の時良い組は何通りあるか。

良い組について上の条件 2 の 7 つの値の和をその組の値とする。それぞれの $S$ について $a, \dots, f$ の和が $S$ の、全ての良い組の値のうちの最小値を $P(S)$ とする。

(2)

非負整数 $S$ について $P(S)\leqq N$ を常に満たす $N$ の最小値を求めよ。また、等号が成り立つ $S$ を全て答えよ。

3

☆☆☆☆

点 $P$ が三辺の長さが $a$, $b$, $c$ ($a\leqq b\leqq c$) の三角形 $ABC$ の辺上を動き回っている。年末なので点 $P$ が疲れてしまっていつ動かなくなってしまうか分からない。そこで、$P$ がどこで止まってしまっても $P$ と近い方の救護所との距離の最大値が最も小さくなるように平面上に 2 つの救護所を置く。この時この距離の最大値は $a/2$ 以上 $b/2$ 以下となる事を証明せよ。

4

☆☆☆☆☆☆(2014 IMO SLP (G1).改)

鋭角三角形 $ABC$ について $\angle{ABC}=\angle{CAD}$, $\angle{ACB}=\angle{BAE}$ となる点 $D$, $E$ を直線 $BC$ 上に取る。$AP\cdot AQ=AD\cdot AQ+AE\cdot AP$ となる $P$, $Q$ を直線 $AD$, $AE$ 上に $D$, $E$ について $A$ と反対側にとる。$BQ$ と $CP$ の交点が $\triangle{ABC}$ の外接円上にある事を証明せよ。

5

☆☆☆☆☆☆(2013 IMO SLP (C2).改)

同一平面上に赤色の点が $M$ 個、緑色の点が $N$ 個 ($2\leqq M\leqq N$) 個存在し、$M+N$ 個の点はどの 3 点も同一直線上にない。この時 $K$ 本の直線で平面をいくつかの領域に分け、どの違う色の 2 点も同じ領域にないようにしたい。最初にどのように点がおかれても必ず可能であるような $K$ の最小値を求めよ。

Merry Christmas!!

解答

1

$(a+1)+(b+2)+(c+3)=2022$。相加相乗平均不等式より $(a+1)(b+2)(c+3)\leqq (2022/3)^3=(674)^3$。$a=673$, $b=672$, $c=671$ の時 $(674)^3$ となり、これが最大値。

2

(1)

良い組は $(a+b+c,d+e,f)=(8,8,9), (8,9,8), (9,8,8)$ のどれかで $(a,b,c)$ は $a+b+c=9$ の時 $(3,3,3)$ のみ $1$ 通り。$a+b+c=8$ の時 $(3,3,2)$, $(3,2,3)$, $(2,3,3)$ の $3$ 通り。$(d,e)$ は $d+e=8$ のとき $(d,e)=(4,4)$ のみ $1$ 通り。$d+e=9$ のとき $(d,e)=(4,5), (5,4)$ の $2$ 通り。$f$ はそれぞれ $1$ 通り。よって $(3\times1\times1)+(3\times2\times1)+(1\times1\times1)=10$ 通り

(2)

$(a+b+c)$, $(d+e)$, $(f)$ は $n$ によって

  • 3 つとも同じ→$\lvert a+b+c-d-e\rvert+\lvert d+e-f\rvert+\lvert a+b+c-f\rvert=0$
  • 2 つだけ同じ→$\lvert a+b+c-d-e\rvert+\lvert a+b+c-f\rvert+\lvert d+e-f\rvert=2$

のいずれか。$(a,b,c)$ も同様。$(d,e)$ は $d+e$ が奇数の時 $\lvert d-e\rvert=1$、偶数の時 $\lvert d-e\rvert=0$ となる。ここで、$(a+b+c)$, $(d+e)$, $(f)$ が後者のパターンの時この 3 つは隣り合う 2 数のどちらかであり、どちらの数も存在する。((1) 参照) この時隣り合う 2 数のうちどちらかは偶数だから良い組のうち少なくとも 1 つは $\lvert d-e\rvert=0$ を満たす。よって $(a+b+c)$, $(d+e)$, $(f)$ が前者の時 $P(S)$は $0+2+1=3$ 以下、後者の時 $P(S)$ は $2+2+0=4$ 以下となり $N\leqq 4$ がいえる。$S=4$ のとき $P(S)=4$ となるから $4\leqq N$。よって $N=4$。

3

この問題は、「三角形のある平面上にうまく点を 2 つとって、それら 2 点を中心として三角形の辺上をすべてカバーするのに必要な円の半径の最小値を求める。ただし、2 つの円の半径は等しい」と言い換えられる。$BC=a$, $CA=b$, $AB=c$ とおく。そのような 2 円を考えた時どちらか 1 つの円は $A$, $B$, $C$ のうち 2 つの頂点を円内に含んでいる。すると、その円の直径はその含んでいる 2 点を結ぶ辺の長さ以上であると言える。辺の長さは $a\leqq b\leqq c$ なので直径は $a$ 以上。よって半径は $(a/2)$ 以上。半直線 $CB$ 上に $CB ^ \prime=b$ となるような $B ^ \prime$ をとる。$AC$ と $B ^ {\prime}C$ の中点をそれぞれ $M$, $N$ として $M$, $N$ を中心に半径 $(b/2)$ の円を書くと、この 2 円は $C$ と、$AB ^ {\prime}$ の中点、の 2 点で交わるから $\triangle{AB ^ {\prime}C}$ を完全に含む。$a\leqq b$ より $\triangle{ABC}$ は $\triangle{AB ^ {\prime}C}$ に含まれるからこの 2 円は必ず $\triangle{ABC}$ の辺を全て含む。よって $(b/2)$ 以下。

4

等式を言い換えると $AD\times AE=DP\times EQ$ となる。$\triangle{ABD}$ と $\triangle{CAE}$ は相似(∵角度を調べるとわかる)より $$\begin{aligned}BD:DP&=BD:AD\times(DP/AD)\\ &=AE:CE\times(DP/AD)\\ &=AE\times(AD/DP):CE\\ &=AE\times(EQ/AE):CE\\ &=QE:EC\end{aligned}$$ また、$\angle{BDP}=\angle{QEC}$ より $\triangle{BDP}$ と $\triangle{QEC}$ は相似。よって $\angle{BPD}=\angle{QCE}$。$BQ$ と $CP$ の交点を $X$ として $\angle{BCX}=\angle{QCE}=\angle{BPD}$。また、$\angle{XBC}=\angle{DBP}$ より $\angle{BAC}+\angle{BXC}=\angle{BDA}+\angle{BDP}=180\degree$。よって $X$ は $\triangle{ABC}$ の外接円周上にある。

5

任意に赤色の 2 点を選んだ時その 2 点を 2 本の直線によって、緑色の点を含まない領域に入れる事が出来る。このように分けられた点は、この後どのように線が引かれようとも緑の点と同じ領域になることはない。これは、どの 3 点も一直線上にないことから、2 点を結ぶ直線に平行で幅が十分小さい 2 線を考えると実現できる。円周上に赤の点を置きその円周上の間に必ず 1 つ以上緑の点が含まれるように置く。$M\leqq N$ より必ず可能である。この時最低でもこの円周を直線によって $2M$ 個以上に切り分けなければならない。$1$ 本の直線で $2$ 回しか切れないので $M$ 本以上必要。$M$ が偶数の時、上の議論より $M$ 本で可能。$M$ が奇数の時、緑の点が十分に多いとき赤の 3 点でできるどの 3 角形の内部+全ての赤点の外側 3 点に配置することで $M+1$ 本必要となる。そうでないとき、①もし全ての点の凸包に赤が含まれていたら、それだけを $1$ 本で取り除ける。②ある赤点 3 角形の中に緑点がなければ、それだけを $3$ 本で取り除く。それ以外を上記の方法で取り除くと $M$ 本でできる。ちなみに、$N\leqq M+1$ なら①か、もし凸包が緑だけであれば最低でも2点を1本で分けられる。緑点を上記の方法で取り除く。で $M$ 本でできる。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。良いお年をお迎えください。

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