SUKEN GRAND PRIX 2017


問題

1

次の虫食い算を解け。ただし、2 つある $\triangle$ には同じ数字が入る。

$$\def\arraystretch{1.5} \begin{array}{ccccc} && \square & 2 & \square \\ & \times && \square & \triangle \\ \hline & \square & 0 & \square & \square \\ \square & 1 & \square & \square & \\ \hline \triangle & \square & 7 & \square & \square \end{array}$$

2

$xy$ 平面において、格子点を 4 頂点に持つ、一辺の長さが $1$ の正方形を「マス」と呼ぶ。領域 $\lvert x\rvert+\lvert y\rvert\leqq 10$ に完全に含まれるマスを次の条件を満たすように白と黒で塗り分ける方法は何通りあるか。

条件:どのマスについても、隣接するマスのうち、白で塗られたもの、黒で塗られたものの個数が共に 2 個以下である。

3

三角形 $ABC$ があり、三角形の内部に $\angle{PAC}=12\degree$, $\angle{PCA}=18\degree$ となるような $P$ をとる。$\angle{BAC}=84\degree$, $AB=2AC$ の時 $\angle{ABP}$ を求めよ。

4

$x$, $y$, $z$ が $x^2=y+2$, $y^2=z+2$, $z^2=x+2$ を満たす実数であるとき、$(x+y+z)^3-(x^3+y^3+z^3)$ の値として考えられるものをすべて求めよ。

5

数列 $\lbrace a_{n}\rbrace$ が次の条件を満たすとき、この数列の要素がすべて整数となりうるような、$(a_1, a_2)$ の組をすべて求めよ。

条件:すべての自然数 $n$ に対し、$a_{n+2}$ が方程式 $x^2+a_{n+1}x+a_n=0$ の解である。

6

次の問いに答えよ。

  1. 任意の正整数 $n$ について、$2^n+a$ が素数となる正整数 $a$ は存在するか。
  2. 任意の正整数 $n$ について、$2^n+b$ が合成数となる正奇数 $b$ は存在するか。

7

$a$ を $1$ より大きい実数、$b$ を自然数の定数とする。次の極限値を求めよ。$$\lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^{n}\frac{k(k+1)(k+2)\cdots(k+b)}{a^k}$$

8

正実数 $k$ について、数列 $\lbrace a_n\rbrace$ を $$a_1=k,\quad a_{n+1}-a_n=\frac{1}{k}\biggl(\frac{a_{n+1}}{2^n}\biggr)^2,\quad a_{n+1}\leqq 2^{2n-1}k\quad (n\geqq1)$$ を満たすように定義する。この時、常に $a_{n}<X$ を満たす最小の $X$ を、$k$ を用いて表せ。もし、$\lbrace a_n\rbrace$が発散・振動するならばそれを示せ。

9

$AB=14$, $AC=4$, $BC=6\sqrt{3}$ である三角形 $ABC$ がある。ここで、$AC$ を $5:3$ に外分する点 $D$ をとり、$\triangle{ABC}$, $\triangle{ABD}$, $\triangle{BCD}$ の外心をそれぞれ$O_1$, $O_2$, $O_3$とする。$\triangle{O_1O_2O_3}$の面積を求めよ。

10

$n$ を $5$ 以上の整数とする。このとき $x$ についての方程式 $$x^n+n^2x^{n-1}+(n-1)^2x^{n-2}+\cdots+2^2x+1=0$$ が $n$ 個の相異実数解を持つことはないことを示せ。

11

$m$ は $29$ の倍数でない自然数とする。$1$ に「$1000$ をかける」または「$29$ を足す」という操作を繰り返し行い、$m$ をつくることを考える。

(1)

$m$ が十分大きければ操作を繰り返して作れることを示し、作ることのできない最大の $m$ を求めよ。

(2)

$m$ は (1) で求めた数より大きく、$1000^{2017}$ より小さいとする。$m$ を最小の操作回数で作ろうとしたとき、その回数が最大になる $m$ を求めよ。

12

$AB\neq AC$ なる三角形 $ABC$ において、内接円 $\omega$ と線分 $BC$ の接点を $D$、線分 $BC$ の中点を $M$ とする。線分 $BC$ 上に $BD=CX$ を満たす点 $X$ を取り、線分 $AX$ と $\omega$ の交点のうち $A$ に近い方を $E$ とする。$F$ を $MX$ の中点とし、線分 $EF$ 上に相異なる点 $P$, $Q$ を取ったところ、三角形 $MPQ$ の外接円が $\omega$ と線分 $BC$ に接した。このとき、三角形 $XPQ$ の外接円は $\omega$ に接することを示せ。

解答

1

$$\def\arraystretch{1.5} \begin{array}{ccccc} && 5 & 2 & 1 \\ & \times && 8 & 4 \\ \hline & 2 & 0 & 8 & 4 \\ 4 & 1 & 6 & 8 & \\ \hline 4 & 3 & 7 & 6 & 4 \end{array}$$

2

条件は斜めに隣り合うマスどうしの関係を表しているので、内部のマスを2 つに分けることができる。 よって、条件を満たす塗り方の総数は、(縦 10 × 横 9 のマスを、どの 2 × 2 の正方形を見ても白が 2 マス、黒が 2 マスとなるような塗り分け方の総数…(※) の 2 乗である。(※) を求める。

(i) 縦に 2 マス連続した同じ色のマスが存在するとき

この2行はそれぞれ白と黒が交互に並んでいる。よって、全ての行において白と黒が交互に並んでいる。よって、求める場合の数は $2^{10}=1024$ 通りから、全ての行が交互に並んでいるが、隣り合っている同じ色のマスがない、つまり市松模様になる $2$ 通りを引いて $1022$ 通り

(ii) 横に 2 マス連続した同じ色のマスが存在するとき

(i) と同様にして$2^9-2=510$ 通り

(iii) 隣り合っている同じ色のマスがないとき

市松模様になる $2$ 通り

以上を足して $1534$ 通り

よって、求める場合の数は $1534^2=\underline{2353156\text{ 通り}}$ である。

3

$AB$ の中点を $M$ とおく。また $MC$ に関して $P$ と対称な点を $Q$ とする。$\angle{PCM}=30\degree$ より $\triangle{PQC}$ は正三角形である。$\angle{PAC}+\angle{PCA}=30\degree$ より $AP$ は $QC$ の中点と交わる。また $\triangle{APC}$ と $\triangle{APQ}$ は $AP$ が共通、$\triangle{PQC}$ は正三角形なので $PQ=PC$、$\angle{APC}=\angle{APQ}=150\degree$ より 2 辺夾角相等で合同。対応する辺の長さは等しいので $AC=AQ$、$\angle{PAQ}=12\degree$ なので $\angle{MAQ}=60\degree$、$AQ=AM$ より $\triangle{AMQ}$ は正三角形。また、$\triangle{MPC}$ と $\triangle{MQC}$ は $MC$ に関して線対称である事と合わせて $AM=MQ=MP=MB$、$\angle{PMC}=\angle{QMC}=12\degree$。ゆえに $\triangle{MBP}$ は二等辺三角形なので、求める角は $\angle{ABP}=\angle{MBP}=(180-144)\div2=\underline{18\degree}$ となる。

4

$(x+y+z)^3-(z^3+y^3+z^3)=3(x+y)(y+z)(z+x)$ に注意する。

$$\begin{aligned} x^2&=y+2\text{ $\cdots$①} \\ y^2&=z+2\text{ $\cdots$②} \\ z^2&=x+2\text{ $\cdots$③}\end{aligned}$$

$\text{①}-\text{②}$ より $(x-y)(x+y)=y-z\text{ $\cdots$④}$.

$\text{②}-\text{③}$ より $(y-z)(y+z)=z-x\text{ $\cdots$⑤}$.

$\text{③}-\text{①}$ より $(z-x)(z+x)=x-y\text{ $\cdots$⑥}$.

$\text{④}\times\text{⑤}\times\text{⑥}$ より $(x+y)(y+z)(z+x)(x-y)(y-z)(z-x)=(x-y)(y-z)(z-x)\text{ $\cdots$⑦}$.

(i) $x$, $y$, $z$ が相異なるとき

$(x-y)(y-z)(z-x)\neq 0$ なので、$\text{⑦}$ の両辺をこれで割り、$(x+y)(y+z)(z+x)=1$. よって、求める値は $3$。このような $x$, $y$, $z$ の存在はすぐに言える。

(ii)

$x$, $y$, $z$ の少なくとも 2 つの値が等しいとき、一般性を失わず、$x=y$ とすると、$\text{④}$ にこれを代入すると $y-z=0$ となるので、$x=y=z$. また, $\text{①}$ に $x=y$ を代入し、方程式を解くと $x=-1$, $2$. 求める値は $(x+x+x)^3-(x^3+x^3+x^3)=24x^3$ であるので、$-24$, $192$. 以上より、考えられる値は、$\boxed{-24,3,192}$ である。

5

(i) $a_{1}$, $a_{2}$ に $0$ が含まれる場合

$(a_{1},a_{2})=(0,0)$ のときは、全ての項が $0$ となり、適する。$(a_{1},a_{2})=(n,0)$ ($n\neq0$) のとき、$a_{3}=\pm\sqrt{-n}$。以下 $n=-m^2$ ($m>0$) とする。$a_3=\sqrt{-n}=m$ のとき、$a_4$ は $x^2+mx=0$ の解なので、$x=0$, $-m$。$a_4=-m$ のとき、$a_5$ は $x^2-mx+m=0$ の解で、$a_5=\dfrac{m\pm\sqrt{m^2-4m}}{2}$。$\sqrt{m^2-4m}$ が整数となるのは $m=4$ のみとわかるが、$a_6$ が整数となりえず不適。$a_4=0$ のとき $a_5$ は $x^2+m=0$ の解となるが、これは解なしなので不適。

$a_3=-\sqrt{-n}=-m$ のとき $a_4=0$, $m$。$a_4=m$ のとき上の議論と同様にすれば不適であることがわかる。$a_4=0$ のとき $a_5=\pm\sqrt{-m}$ となる。これが無限に続くには、根号内が $1$ であるときに限られ、$n=-1$ を得る。

$(a_{1},a_{2})=(0,n)$ のときも、同様に考えれば、$n=-1$ のみとわかる。

(ii) いずれにも $0$ が含まれない場合

$a_n\neq0$ ならば $a_{n+2}\neq0$ であるから、この数列に $0$ は存在しないとわかる。ここで、次の仮定が間違っていることを示す。

仮定:全ての $n$ において、$x^2+a_{n}x+a_{n-1}=0$ の解が $\pm1$ でない。

これが正しいとすると、2 解を $\alpha$, $\beta$ としたとき、$\lvert\alpha,\beta\rvert\geqq2$ であるから、$|a_{n-1}|=|\alpha\beta|>|\alpha|$, $|\beta|=|a_{n+1}|$ が成り立ち、$n$ が十分大きければ、$a_{n-1}$, $a_{n}=\pm1$ となるが、$x^2+x+1=0$, $x^2+x-1=0$, $x^2-x+1=0$, $x^2-x-1=0$ はいずれも整数解をもたないから、この仮定は矛盾である。ゆえに、ある $n$ において、$x^2+a_{n}x+a_{n-1}=0$ の解が $\pm1$ となる。解が $1$, $m$ であるとすると、$a_{n}=-m-1$, $a_{n-1}=m$ とする。ここから $a_{n-2}$, $a_{n-3}$, $\dots$, $a_{2}$, $a_{1}$ を求めていこう。$a_n$ が方程式 $x^2+a_{n-1}x+a_{n-2}=0$ の解であるので、$x=-m-1$, $a_{n-1}=m$ を代入すると、$a_{n-2}=-m-1$ が求まる。$a_{n-1}$ が方程式 $x^2+a_{n-2}x+a_{n-3}=0$ の解であるので、$x=m$, $a_{n-2}=-m-1$ を代入すると、$a_{n-3}=m$ が求まる。したがって、$m$, $-m-1$, $m$, $\dots$ と循環するので、$(a_1,a_2)=(-m-1,m)$, $(m,-m-1)$ が求まる。この時数列を $m$, $-m-1$, $m$, $-m-1$ $\dots$ と無限に続かせられるので、$(-m-1,m)$, $(m,-m-1)$ は答えである。解が $-1$, $m$ であるとすると、$a_n=-m+1$, $a_{n-1}=-m$ とする。このとき、$a_{n+1}$ は方程式の解であるので、$a_{n+1}$ は $-1$ または $m$。$a_{n+1}=-1$ とする。$a_{n+3}$ について考える。$a_{n+3}$ は $x^2+a_{n+2}x+a_{n+1}$ の解である。解の公式より、$a_{n+3}=\dfrac{-a_{n+2}\pm\sqrt{a_{n+2}^2-4a_{n+1}}}{2}$ だが、$\sqrt{a_{n+2}^2-4a_{n+1}}=\sqrt{a_{n+2}^2+4}$ が整数になることはないので、不適。$a_{n+1}=m$ とする。$a_{n+2}$ について考える。$a_{n+2}$ は、$x^2+a_{n+1}x+a_{n}=0\iff x^2+mx+(-m+1)=0$ の解。解の公式より $a_{n+2}=\dfrac{-m\pm\sqrt{m^2+4m-4}}{2}$。$m^2+4m-4$ が平方数なので、$m^2+4m-4=k^2$ ($k$ は整数) とおく。$(m+2)^2-8=k^2$ より、$(m+2+k)(m+2-k)=8$。よって、$m=1$, $-5$。ゆえに $(a_{n},a_{n+1},a_{n+2})=(0,1,0)$, $(0,1,-1)$, $(6,-5,2)$, $(6,-5,3)$。しかし、いずれも $a_{n+3}$ が整数とならないので不適。$(0,-1)$, $(-1,0)$ は $(m,-m-1)$, $(-m-1,m)$ の $m=0$ の場合なので、以上より条件をみたす組 $(a_{1},a_{2})$ は $\underline{(0,0),\ (m,-m-1),\ (-m-1,m)\text{ ($m$ は任意の整数)}}$ である。

6

(1)

存在しない。もしこのような $a$ があったとすると、仮定より $2+a$ は素数である。するとフェルマーの小定理より $2^{2+a}+a≡2+a≡0\pmod{2+a}$。よって $2^{2+a}+a$ は $2+a$ の倍数であり、しかも明らかに $2+a$ よりも大きいので合成数となる。これは仮定に矛盾する。

(2)

存在する。全ての整数は $1\pmod2$、$2\pmod4$、$4\pmod6$、$4\pmod8$、$8\pmod{12}$、$0\pmod{24}$ のどれかを満たす。$n\equiv1\pmod2$ のとき、$2^n\equiv2\pmod3$ より $b\equiv1\pmod3$ ならばこのとき $2^n+b$ は $3$ の倍数となり、$b$ が $2$ 以上ならば素数とならない。同様にすると、結局、$b$ は $1\pmod3$、$1\pmod5$、$5\pmod7$、$1\pmod{17}$、$4\pmod{13}$、$240\pmod{241}$ を全て満たし $240$ 以上ならば、任意の正整数 $n$ で $2^n+b$ は素数とならない。中国剰余定理より条件を満たす $b$ は存在する (具体的には $1518781$ など) ので、示された。

7

$$S_{m}=\lim_{m\to\infty}\sum_{k=1}^{m}\frac{k(k+1)(k+2)\cdots(k+b)}{a^k}$$とおく。ただし、$S_{0}=\displaystyle\lim_{n\to\infty}\sum_{k=1}^{n}\frac{1}{a^k}$とする。求める値は$S_{b}$である。 \begin{align} S_{m}&=\dfrac{1\cdot2\cdots\cdot m}{a}+\dfrac{2\cdot3\cdots\cdot(m+1)}{a^2}+\dfrac{3\cdot4\cdots\cdot(m+2)}{a^3}+\cdots\notag \\ \dfrac{S_{m}}{a}&=\dfrac{1\cdot2\cdots\cdot m}{a^2}+\dfrac{2\cdot3\cdots\cdot(m+1)}{a^3}+\cdots\notag \end{align} であるから、辺々引いて、$$\biggl(1-\dfrac{1}{a}\biggr)S_{m}=m\biggl(\dfrac{1\cdot2\cdots\cdot(m-1)}{a}+\dfrac{2\cdot3\cdots\cdot m}{a^2}+\dfrac{3\cdot4\cdots\cdot(m+1)}{a^3}+\cdots\biggr)$$ となり、これはすなわち、$S_{m}=\dfrac{ma}{a-1}S_{m-1}$ ということである。これが $m=1$ の時成り立つことも容易に確かめられる。この等式を繰り返し使うことで、$S_{b}=\dfrac{b!a^b}{(a-1)^b}S_{0}$ を得る。等比数列の和の公式から、$S_{0}=\dfrac{1}{a-1}$ であるので、$S_{b}=\underline{\dfrac{b!a^b}{(a-1)^{b+1}}}$ となる。

8

まず、$2^{2n+4}\biggl(\dfrac{4}{k}a_{n+1}\biggr)-4\biggl(\dfrac{4}{k}a_{n+1}\biggr)^2=2^{2n+4}\biggl(\dfrac{4}{k}a_{n}\biggr)$ が成り立つ。また、$\dfrac{1}{k}\biggl(\dfrac{a_{n+1}}{2^n}\biggr)^2>0$ より $0<a_{1}\leqq a_{2}\leqq\cdots\leqq a_{k}$ であり、任意の $n\geqq 1$ について $a_{n}>0$ を満たす。ここで、$b_{n}=\sqrt{\dfrac{4}{k} a_{n}}$ とする。この時、$b_{1}=2$, $b_{n+1}\leqq2^{\frac{2n+1}{2}}$ ($n\geqq1$) となり、$2^{2n+4}b_{n+1}^2-4b_{n+1}^4=2^{2n+4}b_n^2$。両辺を $2^{4n+4}$ で割って $4\biggl(\dfrac{b_{n+1}}{2^{n+1}}\biggr)^2-4\biggl(\dfrac{b_{n+1}}{2^{n+1}}\biggr)^4=\biggl(\dfrac{b_n}{2^n}\biggr)^2$。次に、$c_{n}=\dfrac{b_{n}}{2^n}$ とする。このとき、$c_{1}=1$, $c_{n+1}\leqq2^{-\frac{1}{2}}$ ($n\geqq1$) となり、$4c_{n+1}^2-4c_{n+1}^4=c_{n}^2$。変形して、${(2{c_{n+1}}^2-1)}^2=1-{c_{n}}^2$。$2{c_{n+1}}^2-1\leqq0$, ${c_{n}}^2-1<0$ より $1-2{c_{n+1}}^2=\sqrt{1-{c_{n}}^2}$。$1-\sqrt{1-{c_{n}}^2}\geqq0$ より、$c_{n+1}=\sqrt{\dfrac{1-\sqrt{1-{c_{n}}^2}}{2}}$。$c_{n}\leqq1$ より、$c_{n}=\sin\alpha$ とすると、$c_{n+1}=\sin⁡ \dfrac{\alpha}{2}$。$c_{1}=1$ より、$c_{n}=\sin⁡ \dfrac{\pi}{2^n}$ であるから、$b_{n}=2^n\sin \dfrac{\pi}{2^n}$。ここで、半径 $1$ の円に内接する正 $2^n$ 角形の周の長さは、$L=\sin \dfrac{\pi}{2^n}\times 2\times 2^n=2^{n+1} \sin \dfrac{\pi}{2^n}$ と表される。これは $L<2\pi$ を常に満たし、$n\to\infty$ で $2\pi$ に限りなく近づく。よって常に $b_{n}<\pi$。ゆえに $a_{n}<\dfrac{k}{4}\pi^2$ となり、$n\to\infty$ で $a_{n}$ は $\underline{\dfrac{k}{4}\pi^2}$ に限りなく近づく。

9

直線 $BC$ 上に $AE\perp BC$ となる $E$ をとり、$AE=a$, $CE=b$ とすると、$a^2+b^2=4^2=16$, $a^2+(b+6\sqrt{3})^2=a^2+b^2+12\sqrt{3}b+108=14^2=196$. よって $a=2$, $b=2\sqrt{3}$ より、$\triangle{ACE}$ は三辺比 $1:\sqrt{3}:2$ の直角三角形であるので、$\angle{ACE}=30\degree$、ゆえに $\angle{ACB}=150\degree$, $\angle{BCD}=30\degree$. ここで $O_1$ は $\triangle{ABC}$ の外心であるから、$\angle{AO_1B}=2(180\degree-150\degree)=60\degree$. $O_1A=O_1B$ より、$\triangle{O_1AB}$ は正三角形である。直線 $DO_1$ と $\triangle{ABC}$ の外接円との交点のうち、$A$ を含まない方の弧 $BC$ と $DO_1$ の交点を $P$ とし、$P$ ではない方を $Q$ とすると、$DP\cdot DQ=DA\cdot DC=10\cdot 6=60$. ここで、$DP=x$ とすると、$DQ=x+14\times 2=x+28$ より、$x(x+28)=60$. $x>0$ より、$x=2$. よって $DP=2$ より、$DO_1=16$. ここで、$O_1$ の $AD$ に対する垂線の足を $H$ とし、$AH=y$ とすると、$14^2-y^2=16^2-(10-y)^2$. これを解いて、$y=2$ より、$DH=8$. $\triangle{O_1HD}$ は、$\angle{O_1HD}=90\degree$. $O_1D:DH=2:1$ の直角三角形であるので、$\angle{O_1DH}=\angle{O_1DA=60\degree}$. ゆえに、$\angle{O_1DA}=\angle{O_1BA}=60\degree$ より$O_1$, $A$, $B$, $D$ は同一円周上にある。よって $\angle{O_1DB}=\angle{O_1AB}=60\degree$. これより、$\angle{CDO_1}=\angle{BDO_1}$であり、$DO_1$ は $\angle{BDC}$ の角二等分線とわかり、ここで、$O_1A=O_1C$ より、$\triangle{O_1AC}$ は二等辺三角形なので、$\angle{O_1AC}=\angle{O_1CA}$. また、$O_1$, $A$, $B$, $D$ は同一円周上なので、$\angle{O_1AD}+\angle{O_1BD}=180\degree$. ゆえに、$\angle{O_1BD}=180\degree-\angle{O_1AC}=180\degree-\angle{O_1CA}=\angle{O_1CD}$. $DO_1$ が共通であり、二角夾辺が等しいから、$\triangle{O_1BD}$ と $\triangle{O_1CD}$ は合同である。よって $BD=CD=6$. ここで$\triangle{BCR}$ が正三角形となるように $BC$ に関して $D$ と反対側に $R$ をとる。すると、$\angle{BCR}=60\degree$ より、$\angle{BRC}+\angle{BDC}=180\degree$ となるので $B$, $C$, $D$, $R$ は同一円周上。ゆえに、$O_3$ は正三角形BCRの外心でもあるので、$O_3$ は $\angle{BRC}$ の角二等分線上にある。また、$RB=RC$, $BD=CD=6$ であり、$RD$ も共通だから、三辺相等より、$\triangle{RBD}$ と $\triangle{RCD}$ は合同であるので、$\angle{BDR}=\angle{CDR}$, $\angle{BRD}=\angle{CRD}$. これらより、$O_3$, $D$ は $\angle{BRC}$ の角二等分線上にあり、$O_3$ は $DR$ 上にある。$\angle{CDR}=\angle{CDO_1}=60\degree$ で $R$ と $O_1$ は直線 $CD$ に関して同じ側にあるので、$R$ は直線 $O_1D$ 上にある。よって $O_3$ は $O_1D$ 上にある。$AB$ の中点を $M$ とすると、$\triangle{ABO_1}$ は正三角形で、その外心が $O_2$ であるので $O_2M\perp AB$. また、$O_1O_2=\dfrac{\sqrt{3}}{3}AB=\dfrac{14\sqrt{3}}{3}$. $M$ は $AB$ の中点であるから、中線定理より$AD^2+BD^2=2(AM^2+DM^2)$. 値を代入して $DM=\sqrt{19}$. ここで $D$ から $O_1M$ に引いた垂線の足を $F$ とし、$DF=x$, $MF=y$ とすると、$DF^2+MF^2=DM^2$ より、$x^2+y^2=\sqrt{19}^2=19$. $DF^2+O_1F^2=O_1D^2$ より、$x^2+\biggl(y+\dfrac{14\sqrt{3}}{2}\biggr)^2=16^2=256$. これを解いて $DF=x=\dfrac{16}{7}$, $MF=y=\dfrac{15\sqrt{3}}{7}$. $BC$ の中点を $M ^ {\prime}$ とすると、$DM ^ {\prime}=\dfrac{6}{2}=3$. $O_3M ^ {\prime}=\dfrac{6\sqrt{3}\cdot\sqrt{3}}{6}=3$. よって $DO_3=3+3=6$. $DO_1=16$, $DE\;(\perp O_1O_2)=\dfrac{16}{7}$ より、$O_1O_2$ に対する $O_3$ の高さは $\dfrac{\frac{16}{7}\cdot(16-6)}{16}=\dfrac{10}{7}$. $\triangle{O_1O_2O_3}=\dfrac{1}{2}O_1O_2\cdot\dfrac{10}{7}=\boxed{\dfrac{10\sqrt{3}}{3}}$である。

10

左辺の多項式を $f(x)$ とおく。この方程式 $f(x)=0$ が $0$ 以上の解を持たないのは明らかである。なぜなら係数が全て正なので、$x\geqq0$ だと $f(x)$ は必ず正となってしまうからだ。さて、この方程式が $n$ 個の解を持ったとしよう。この $n$ 個の解は、先程の事実より、ある正実数 $a_1$, $\dots$, $a_n$ を用いて $-a_1$, $\dots$, $-a_n$ と表せる。また、因数定理より $f(x)$ は $(x+a_1)$, $\dots$, $(x+a_n)$ で割り切れなければならず、また $f(x)$ は $n$ 次で、最高次の係数が $1$ より、$f(x)=(x+a_{1})\cdots(x+a_{n})$ となる。定数項を比べることで、$a_{1}a_{2}\cdots a_{n}=1$ が分かる。さてここで $g(x)=(a_{1}x+1)\cdots(a_{n}x+1)$ という多項式を考えてみよう。$f(x)$ と形を比べると、$0$ 以上 $n$ 以下の整数 $i$ において、$f(x)$ における $x_{i}$ の係数は $g(x)$ における $x^{n-i}$ の係数とならなければならないことがわかる。従って $g(x)=x^n+2^2x^{n-1}+\cdots+n^2x+1$ となる。また、$a_1a_2\cdots a_n=1$ より、$a_1$, $\dots$, $a_n$の逆数をそれぞれ$b_1$, $\dots$, $b_n$ とおくと、$g(x)=(x+b_{1})\cdots(x+b_{n})$ となる (元の式を $a_{1}\cdots a_{n}$ で割った)。よって、$x^n+2^2x^{n-1}+\cdots+n^2x+1=(x+b_{1})\cdots(x+b_{n})$ が成り立つ。さて $b_{1}$, $\dots$, $b_{n}$ は全て正なので、相加相乗平均の不等式より $\dfrac{b_{1}+\cdots+b_{n}}{n}\geqq{(b_{1}\cdots b_{n})}^{\frac{1}{n}}$ とならなければならない。しかし、$x^{n-1}$ の係数を比べると $b_{1}+\cdots+b_{n}=4$ が、定数項を比べると $b_{1}\cdots b_{n}=1$ がわかるため、$\dfrac{4}{n}\geqq1$ となってしまう。これは $n\geqq5$ より矛盾である。従って、方程式 $f(x)=0$ が $n$ 個の実数解を持つことはない。

11

「$1000$ をかける」操作を A,「$29$ を足す」操作を B とおく。

(1)

まず、$1000^i\equiv1\pmod{29}$ なる最小の自然数 $i$ が $28$ であることを示す。フェルマーの小定理から、$1000^{28}\equiv1\pmod{29}$ であるので、$i$ は $28$ の約数である。合同式を用いて $i=2$, $4$, $7$, $14$ として計算しても、$1000^i\equiv1\pmod{29}$ とならないので、これは成り立つ。したがって、$1$, $1000$, $1000^2$, $1000^3$, $\dots$, $1000^{27}$ を $29$ で割ったあまりは、$1$, $2$, $\dots$, $28$ の並び替えになる。A を繰り返すことで $29$ を法として $n$ と合同な数をつくることができ、そこから適切な数 B を繰り返すことで、十分大きな $n$ をつくることができる。逆に、$1000^{27}-29$ 以下で、$1000^{27}$ と $29$ を法として合同な数はどうやってもつくることができない。ゆえに、$\underline{1000^{27}-29}$ がつくることのできない最大の数である。

(2)

B を $a_{n}$ 回 → A → B を $a_{n-1}$ 回 → A → … → B を $a_{0}$ 回という手順で作った数は、$(29a_{n}+1) 1000^n+29a_{n-1}1000^{n-1}+\cdots+29a_{0}$ ($a_{0}$, $a_{1}$, $\dots$, $a_{n}$ は非負整数) と表せる。つくりたい整数を $N$ としたとき、その最小の操作回数は、$N=(29a_{n}+1) 1000^n+29a_{n-1}1000^{n-1}+\cdots+29a_{0}$ ($a_{0}$, $a_{1}$, $\dots$, $a_{n}$ は非負整数) と表したときの $a_{0}+a_{1}+\cdots+a_{n}+n$ の最小値である。$N\equiv1000^n\pmod{29}$ であり、$1000^n\equiv1000^{n+i}\pmod{29}$ となる最小の $i$ は $28$ であることから、$n$ を $28$ で割ったあまりは $N$ に応じて特定される。逆に、その条件をみたす $n$ であれば、$N-1000^n$ は $29$ の倍数であり、$N$ を表した式を整理すると、$a_{n}1000^n+a_{n-1}1000^{n-1}+\cdots+a_{0}=\dfrac{N-1000^n}{29}$ となる。これより、$a_{0}$, $a_{1}$, $\dots$, $a_{n-1}\leqq999$がわかる。なぜなら、$a_{i}\geqq1000$ であるとき、$a_{i+1}$ を $1$ 増やし、$a_{i}$ を $1000$ 減らすことで、より小さい構成が可能だからである。$n\geqq1989$ のとき、$(29a_{n}+1)1000^n<1000^{2017}$ から、$a_n<\dfrac{1000^{2017-n}-1}{29}$ であるので、必要な回数は高々 $999(n-1)+\biggl[\dfrac{1000^{2017-n}-2}{29}\biggr]+n$ 回である。$n\leqq1988$ のとき等式 $(29\cdot0+1)1000^{n+28}+29\biggl(a_n-\dfrac{1000^{28}-1}{29}\biggr)\cdot1000^n=(29a_n+1)1000^n$ が成り立つことから、$a_n\geqq\dfrac{1000^{28}-1}{29}$ の時、A を行う回数を $28$ 回増やして、$a_n$ を $a_n-\dfrac{1000^{28}-1}{29}$, $a_{n+28}$ を $0$ にすればより少ない回数で作ることができる。したがって、$a_n\leqq\dfrac{1000^{28}-30}{29}$ で、必要な回数は高々 $999(n-1)+\dfrac{1000^{28}-30}{29}+n$ 回である。よって、必要回数が最大となるのは $n=1989$ で、$a_1$, $a_2$, $\dots$, $a_{1988}=999$, $a_{1989}=\dfrac{1000^{2017}-30}{29}$ の時であるとわかる。以上より、求める値はこれらを代入して $\underline{1000^{2017}-29}$ である。

12

$X$ は、$\angle{BAC}$ の内部にある $\triangle{ABC}$ の傍接円と線分 $BC$ の接点である。$\omega$ とこの傍接円の相似の中心は $A$ である。$E$ と $X$ は対応し、$\triangle{ABC}$ の内心を $I$、$\angle{BAC}$ の内部にある傍心を $I_A$ とするとこれらも対応しているため、$EI\parallel XI_A$ が成り立つ。また、$DI$ と $XI_A$ はともに $BC$ に垂直であるから、$DI\parallel EI$。よって、$D$, $I$, $E$ は同一直線上にあり、$DE\perp BC$。$AX$ と $\omega$ の交点のうち $E$ でない方を $R$ とする。$DE$ は $\omega$ の直径なので $\angle{DRE}=90\degree$ であるから、$\angle{DRX}=90\degree$。よって、$\triangle{DRX}$ の外接円の直径は $DX$ で、中心は $DX$ の中点、つまり $M$ であるから、$MD=MR=MX$。よって、接線の性質より $\omega$ は $MR$ に $R$ で接する。$\omega$と$\triangle{MPQ}$の外接円の接点を $Y$ とし、これらの共通接線と $BC$ の交点を $N$ とすると、接線の性質より $ND=NY=NM$ であるから、$\angle{DYM}=90\degree$。ここで、 \begin{align} \angle{YRX}&=90\degree -\angle{YRD}=90\degree -\angle{YDN} \tag{$\because$ 接弦定理}\\ &=90\degree-\angle{NYD}=\angle{NYM}=\angle{NMY} \notag \end{align} より、内接四角形定理の逆から四角形 $RYMX$ は円に内接する。$\angle{EYM}=\angle{EYD}+\angle{DYM}=180\degree$ より $EYM$ は同一直線上にある。ここで $YMQP$ 共円、$RYMX$ 共円であるから、方冪の定理より $EY\times EM=EP\times EQ$, $EY\times EM=ER\times EX$。よって、$EP\times EQ=ER\times EX$ であるから、方冪の定理の逆より $PQXR$ は共円。方冪の定理より $FQ\times FP=FM^2=FX^2$ であるから、方冪の定理の逆より $\triangle{XQP}$ の外接円は $BC$ に $X$ で接する。これと $MX=MR$ より、接線の性質から $\triangle{XPQ}$ の外接円は $MR$ に $R$ で接する。以上より、$\triangle{XPQ}$ の外接円と $\omega$ は共に $MR$ に $R$ で接するので、互いに接している。